大学病院で手術や抗がん剤で治療したが、改善なく手を尽くした患者さんがいらっしゃった。
先日その先生にお会いした。紹介状のやり取りしかしていなかったが、その先生は印象に残っていたらしい。
僕がその患者に言ったんだ。「大学の先生は手を尽くしたと行っているんですよ。いつまで癌と戦うのですか? 癌と戦って勝っても、正常な細胞もボロボロですよ。あと100年生きたいのですか? もう少し癌と共存して、残された時間を貴方らしく生きることにした方が良いのではないでしょうか?」
その後、その患者さんは3ヶ月間栄養の点滴を受けながら、周囲の人に感謝を述べ、託し、勇気を与えたのち、お亡くなりになりました。
この方、大学での治療を終えるとき、大学の先生に感謝を述べ自宅で療養することを、自らの口で伝えたのです。
データーや治療のレジメなどのインフォームドコンセントをしても、感情的には受け入れられない方々が多いですから。この患者さんとのやり取りのなかで在宅に引っ張った僕のことを印象に思ってくれたのでしょう。
癌と戦うこと、癌で死ぬことは敗北ではない
いずれ人は死ぬのだから
余命が分かっているだけ幸せなことだ
貴方らしく生きることに負けないで欲しい
在宅医はね、貴方らしく生きることをちょっとお手伝いしているだけです。